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あの頃に戻れるなら。
そんなことを、ふと考えてしまう瞬間はありませんか。
楽しかった記憶も、少しの後悔も、その時間が大切だったからこそ生まれるものなのかもしれません。
今回の作品は、子どもの頃に一緒に暮らしていた犬への、懐かしい愛おしさを形にしたいと思い製作しました。
今は猫と暮らしていて、毎日たくさんの癒しをもらっています。
それでも、もう触れることのできないあの子の存在は、心の中に柔らかな温度として残っています。
「もう一度だけ触れられたら」
そんな願いにも似た感覚を、小さな和紙人形に込めました。
ペットに限らず、家族や友人など、大切な存在を想う気持ち。
この作品は、そんな記憶や愛情を形にしたものです。
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ラフスケッチから始まる物語づくり|少年と犬の距離感の設計
こちらは製作前のラフスケッチです。
まずは頭の中に浮かんだ情景をスケッチに落とし込みました。 少年と犬が寄り添う姿。

この作品で一番大切にしたのは、男の子と犬の距離感。
抱きしめる強さ、顔の向き、視線の重なり方。
そのわずかな違いで、ただ隣にいるだけにも、深い絆があるようにも見えます。
また、半ズボンと首輪の色を同じレンガ色の和紙で統一することで、作品全体のアクセントにすることも最初から決めていました。
当初は長毛の犬をイメージしていましたが、首輪が隠れてしまうことに気付き、製作途中で短毛の犬へ変更しました。
犬種を固定しなかったのは、誰か一人の犬ではなく、 読む人それぞれの“記憶の犬”に重なる存在にしたかったからです。
和紙で作る表情の作り方|目・肌・髪の繊細な工程
製作は男の子の顔から始まります。 顔のサイズは2〜3センチほど。

和紙を何層にも貼り重ね、形を整えています。
目の部分は一度削って眼窩を作り、そこへ自作した小さな眼球を入れていきます。
眼球も白い和紙から形成し、アクリル絵の具で着色。
表面にはレジンをコーティングしています。
小さな顔の中に表情を作るため、黒目を入れる作業は特に集中力が必要な工程です。
和紙は、ただ形を作るための素材ではなく、光をまとって表情を変える素材です。
その柔らかな透け感が、もう触れることのできない記憶や、心の中に残る温かさを表現するのに最も適していると感じました。

まつ毛に使う和紙片や、目を作るための道具も小さなものばかり。
専用の道具がない部分は、身近な材料から自作しています。
人のカタチを作っていく
頭部が完成したら、人体のバランスやポーズを考えながら胴体や手足を作ります。

芯材にはクラフト紙と粘土を使用。
犬がまだ完成していない段階では、ちょうど良いサイズのボトルを仮の犬に見立てながら、全体のバランスを調整しました。
もちろん仮のものなので、まずはポーズや距離感を決めることを優先します。
犬の造形と模様づくり|普遍的な愛おしさを目指して
犬は特定の犬種に寄せすぎないようにしました。
この作品の対象が、ある一匹の犬だけではなく、「大切な存在を想う気持ち」そのものになってほしかったからです。
ビーグル、ゴールデンレトリバー、ジャックラッセルテリアなど、いくつかの犬種を参考にしました。
ただ、子どもの頃に飼っていた犬が垂れ耳だったこともあり、自然とこの姿になりました。

犬の芯材も男の子と同じく、クラフト紙と粘土で形成。
白い和紙をベースに貼り、その上から薄い茶色の和紙を細かくちぎって模様を作っています。
肉球や足の形など、人形ではあまり作らない部分も多く、男の子以上に時間をかけた部分です。
仮組みで関係性が立ち上がる瞬間|目線と角度の調整
犬が完成して、ようやく仮組みができるようになります。

腕や足の角度を何度も調整しながら、一人と一匹が自然に寄り添って見える位置を探します。
人形はほんの少し向きを変えるだけでも、不思議なくらい印象が変わります。
まるで初めて出会ったようにも、ずっと一緒に過ごしてきたようにも見える。
見る人によって感じ方が変わる、この距離感こそが、この作品の大切な部分です。
きっと誰にでも、大切な人や動物と過ごした「この距離が好きだった」と思える記憶があるのではないでしょうか。
衣服と髪の仕上げ|寄り添う瞬間を邪魔しない造形の工夫
ポーズが決まった後、細かな製作へ進みます。
靴や髪の毛、服のパーツを少しずつ仕上げていきます。
髪の毛はあえて控えめに作っています。
犬と寄り添った時に、おでこ同士が触れ、髪が少し押しつぶされるような造形を残したかったからです。
髪が邪魔にならないように調整し、接着後にボリュームを足す計画です。

シャツも布の服を着せるのではなく、前身頃、後身頃、袖などのパーツを一枚ずつ貼り合わせて作っています。
白いシャツは、前身頃・後ろ身頃・左右の袖を別々に貼り合わせる方法。
すべて目分量で切り出し、足りない部分は和紙を貼り足していきます。
首輪と最終仕上げ|小さなパーツが物語を完成させる
最後に赤茶色の華奢なデザインの首輪を製作。

小さなメダルは厚紙を切り抜き、金色のマーカー※ で着色したもので、0.3ミリのクラフトワイヤーで首輪に繋ぎました。
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首輪を巻き、男の子と犬を接着し、最後に髪の毛をたっぷりと足して人形部分が完成しました。
台座づくりの考え方|作品を引き立てる“額縁”として
最後は台座作り。
台座は世界観を盛り上げるためというより、作品を引き立てる“額縁”のような役割だと考えています。
作品ごとにサイズや雰囲気が違うため、専用台座を作ることが多いです。
市販品では理想のサイズが見つからないことも多く、型になるものを探すところから始まります。
豆腐やゼリー、スイーツの容器など、意外なものが型になることも。
今回は楕円形が美しい豆腐の容器を使いました。
セピア色の世界観が引き立つよう、少しコントラストをつけた色味に仕上げています。

台座に固定する前の最後の一枚。
取り付けてしまえば見えなくなる部分ですが、この小さな足元や肉球にも時間をかけました。
肉球の色は特にこだわった部分なので、少し名残惜しさもあります。


大きさ/幅7センチ 奥行き5cm 高さ7cm
素 材/和紙・絵の具・レジン・石粉粘土・コンクリート砂
少年が犬をぎゅっと抱きしめる姿は、動物への愛情だけではなく、
家族や友人など、大切な存在を想う気持ちそのものを表しています。
今そばにいる大切な存在への愛情にも。
もう触れることのできない存在への記憶にも。
この小さな和紙人形が、忘れたくない温かさに寄り添う存在になれば嬉しく思います。
この作品は、minne・Creemaにて販売・公開中です。
気になった方は、ぜひ作品ページも覗いてみてください。
作品販売ページはこちら
→ minne https://minne.com/items/45613128
→ Creema https://www.creema.jp/item/20928137/detail
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