創作人形のための高級貼り箱を自作|一点物に合わせた化粧箱の作り方

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この記事は貼り箱製作の専門家による解説ではなく、創作人形作家が自身の作品に合わせて大型の貼り箱を自作した記録です。

なぜ貼り箱を自作することにしたのか

創作人形作家として、地味に頭を悩ませるのが「作品を収める箱」の問題です。

自由なサイズや形で作った作品に、ぴったり合う既製品の化粧箱が見つかることは、そう多くありません。

今回必要になったのは、約35×20cm、高さ20cmほどの化粧箱。しかも必要なのは、たった一つです。

高額な作品を収める箱なので、できれば専門の紙器会社に外注したい。そこで、貼り箱を専門に扱う会社に何社か見積もりをお願いしてみました。

ところが、ある会社からは製作を辞退され、別の会社からはサイズオーバーのため製作不可との回答。製作可能な場合でも、一個だけの特注では費用が高額になり、納品まで数週間かかります。

もちろん、箱にかけられる予算には限りがあります。

けれど、だからといって作品に合わせて作った箱を諦めたり、予算に合わせて箱の仕様を変更したりするのも違う。

私にとって箱は、単なる梱包資材ではありません。

作品を収め、作品を守り、作品を最後まで完成させるもの。箱も作品の一部です。

そこで今回は、「この作品に最も相応しい箱を作るには、自分で作るしかない」という結論に至り、貼り箱の自作に挑戦することにしました。

今回作った箱のサイズと仕様

まず人形のサイズを測り、作品を出し入れしやすく、箱の中で作品が窮屈にならないよう、上下左右に約2cmの空間を確保することにしました。

その結果、箱の内寸は縦185mm × 横335mm × 高さ190mmに決定。

完成した箱の外寸は、おおよそ縦200mm × 横350mm × 高さ195mmです。

箱の形状は、浅ふた・身ふた式(かぶせ箱)。ギフトボックスや美術品の収納などにも使われる、貼り箱の定番の形です。

芯材となる厚紙を組み立て、その表面に化粧紙を貼って仕上げます。今回は、作品を収める箱としての強度と見た目の両方を考え、3mm厚のチップボールを芯材に使用しました。

材料・道具

・芯材:3mm厚チップボール(A3サイズ)

・貼り紙:タント紙 100kg(四六判サイズ)

・接着剤木工用ボンド

水性用刷毛 50mm

圧着ローラー 32mm

大型カッターカッター替刃

ステンレス定規(60cm以上)

カッターマット(硬め・A2以上)

・マスキングテープ

・紙やすり #400くらい

チップボールとタント紙は画材販売.jpで購入しました。

設計・寸法計算

貼り箱は、最初の寸法計算が仕上がりを左右します。

今回の箱の内寸 縦185mm × 横335mm × 高さ190mm

ここから、使用する3mm厚チップボールの厚みを考慮して、各パーツの寸法を計算していきます。

貼り箱では、単純に「欲しい箱のサイズ」でチップボールを切ればいいわけではありません。

3mmという芯材の厚みをどこに加えるか、どのパーツをどのパーツに接するように組むかによって、必要な寸法が変わります。

まずは、芯材のチップボールの寸法を計算します。

貼り箱の「身」の芯材となるチップボールの寸法を決める

必要なパーツとサイズは以下になりました。

パーツ枚数サイズ
底板1枚335×185mm
長側面2枚335×190mm
短側面2枚191×190mm
蓋の芯材(チップボール)の寸法の計算法方

蓋に必要なパーツとサイズは以下になりました。

パーツ枚数サイズ
底板1枚345×195mm
長側面2枚345×80mm
短側面2枚201×80mm

続いて、表面に貼る貼り紙の寸法。

貼り紙はチップボールの表面を覆うだけでなく、チップボールの厚みと箱内側への折り返し分も必要になるためその分の余白を加えて裁断します。

貼り箱(身・蓋)の貼り紙の寸法を計算する

貼り紙の大きさは、「身」637 × 787mm、「蓋」427 × 577mmとなりました。

今回の箱作りで気づいたのですが、

計算で寸法を出すより、先に芯材を組み立ててから実寸を測った方が、確実で手間も少ないということ。

計算を間違えると、貼り紙が余りすぎたり、足りなくなったり。最悪の場合、必要な資材が足りなくなって再発注なんてことにもなりかねません。

貼り紙をカットする前に、まずは芯材を組み立てて箱の形に。

その後、新聞紙などの大きな紙を実際の箱に巻き付け、どこまで折り返すかを確認しながら、必要な長さを測ります。メジャーを使って直接測るのもよさそうです。

実物を基準にすれば、複雑な計算をするよりも間違いが少なく、結果的に時間と労力も減らせそうです。

何個か箱を作ってみて分かった、次回からの改善点です。

チップボールを切り出す

3mm厚のチップボールを寸法通りにカッターナイフで切る

まず、必要な寸法を正確にチップボールに書き込み、カッターナイフで切り出します。

3mm厚のチップボールは、カッターナイフで一度に切り離すことはできません。

定規がずれないようにしっかり押さえ、同じ切り線に沿って、カッターナイフの刃を何度も通して少しずつ切り進めます。

10回程度が目安ですが、力を入れて一気に切ろうとせず、何度も刃を通して、少しずつ切り離すくらいの感覚で進めます。

特に長い直線を切る場合は、途中で定規がずれると寸法そのものが狂ってしまうので、定規をしっかり固定して、同じ位置をなぞることがポイント。

箱の組み立て

パーツを木工用ボンドで接着して組み立て、マスキングテープで固定する

底板を中心に、4枚の側面を組み合わせて箱の形にしていきます。

側面は、「長い側面 → 短い側面」の順番で、底板を囲むように組み立てます。

接着には木工用ボンドを使用し、位置を確認しながら接着します。ボンドが完全に乾いて固定されるまで、マスキングテープで側面を仮固定しておきます。

しっかり接着できたら、次に箱の切断面を整えます。

3mm厚のチップボールは、カッターで切った断面に多少のガタつきや凹凸が残ります。そのまま貼り紙を貼ると、表面に段差や凹凸が響く可能性があるため、#400程度の紙やすりで切断面を整えておきます。

特に角や切断面の大きな凹凸は、貼り紙を貼る前に確認しておくと安心です。

貼り紙(タント紙)を貼る

いよいよ、芯材に貼り紙を貼っていきます。

まず、貼り紙の中央に芯材を貼る位置の目印をつけておきます。大きな紙に芯材をまっすぐ貼るため、最初に位置を決めておくと作業がしやすくなります。

芯材の接着位置を書き込んだ貼り紙(タント紙)

糊を準備する

今回の箱は大きいため、木工用ボンドをそのまま塗っていると、全面に塗り終える前に先に塗った部分が乾いてしまいます。

そこで、木工用ボンドに少量の水を加えて、塗り広げやすい状態に調整しました。

ただし、水を入れすぎたり、ボンドを厚く塗りすぎたりすると、紙は水分を吸って反りや波打ちの原因になります。

そのため、全面に塗り終えるまで乾かない程度に、できるだけ少量の水で伸ばすのがポイントです。

最初から本番の貼り紙で試すのではなく、余った紙などで、どのくらいの濃さなら作業しやすいか予行演習しておくと安心です。

芯材に貼る

今回は、貼り紙ではなくチップボール側にボンドを塗ります。

底面全体に、ボンドをできるだけ均一な厚さになるよう素早く塗り広げます。

ボンドを塗り終えたら、貼り紙につけた目印に合わせて、芯材をそっと載せます。

そのまま箱を上下反転させ、中央から外側に向かって手のひらで軽く押さえ、空気を外へ逃がします。

ある程度密着したら、圧着ローラーに持ち替えます。

中央から外側へ向かってローラーを転がし、紙と芯材の間に残った空気を抜きながら、全体をしっかり圧着します。

大きな面は一度に完璧に貼ろうとせず、中央から少しずつ外側へ進めていくのがポイントです。

中心から外側に向かって圧着ローラーで空気を抜く

側面(長)を貼る前の下準備

長い側面を貼る前に、まず貼り紙に下準備をしておきます。

側面(長)を貼る前に下準備

長い側面の糊付けをする前に、白い点線の部分に切り込みを入れます。

これは、側面に紙を貼ったあと、角の部分をきれいに折り込むための切り込みです。

切り込みを入れたら、チップボールの側面(長)にボンドを均一に塗ります。

シワにならないように貼り付け、中央から外側に向かって手で軽く押さえたあと、圧着ローラーでしっかり密着させます。

側面(短)側に折り込む

側面(長)を貼ると、両端には貼り紙が余る部分ができます。ここは、側面(短)側に折り込んで仕上げます。

単純に2〜3cmほど折り込む方法でも問題ありませんが、今回は紙の厚みによる段差ができるだけ出ないよう、もうひと手間かけます。

側面(短)の中央で、左右から折り込んだ紙がぴったりつながる位置を決め、余分な部分をカットします。

側面(短)側への折り返し部分の処理

紙の重なりを最小限にすることで、貼り合わせた部分の厚みが増えるのを抑え、できるだけフラットに仕上げます。

カットできたら、折り込んだ部分をこれまでと同じ要領で貼り付けます。

その後、箱の縁から飛び出している白い斜線部分をカットします。

不要な部分を切り取る

ここは最終的には見えなくなる部分ですが、余分な紙を取り除いておくことで、この後の内側への折り返しがきれいに収まりやすくなります。

角・折り返し部分の処理

角の処理については、まだ「これが正解」という方法を模索中です。今回は、実際に作りながら試した方法を記録しておきます。

まず、角の点線部分に切り込みを入れます。

折り返し・角をうまく処理するには

このとき、チップボールの角ギリギリまで切り込まず、5mmほど残しておきます。完全に切り離してしまうと、貼り紙の隙間からチップボールが見えてしまいそうになったためです。

切り込みを入れたら、糊を付ける前に、折り込み部分にあらかじめ折り目をつけておきます。紙を実際に折る方向に沿ってクセをつけておきます。

角の紙が浮いたり、余ったりする部分は、折る方向を変えたり、押さえたりしながら、とにかく箱の形に沿わせていきました。

特に角は、折ったり引っ張ったりする際に紙が破れやすい部分なので注意が必要です。

ほぼ力技で箱の形に沿わせただけなので、もっと良い方法を検証したいと思います。

貼り箱一番の難所、折り込み部分に糊付け

ここでは、これまでとは違い、チップボール側ではなくタント紙側にボンドを塗って貼り付けます。

タント紙は水分を吸収しやすいため、ボンドを塗るとあっという間に紙が反ってきます。
この工程は、今回の箱作りの中でも特に難しい作業かもしれません。

反りが出ても慌てず、位置を確認しながら手早く貼り付け、圧着ローラーでしっかりと密着させます。

特に箱の縁や角は、ローラーで丁寧に圧着することで、直線がきれいに出て、角もシャープに仕上がります。

側面(短)を貼る

折り返し部分の処理ができたら、最後に側面(短)の面に貼り紙を貼ります。

ここも、貼り付ける前にあらかじめ折り目をつけておきます。

さらに、できるだけきれいに仕上げるため、貼り紙の両端にある白い点線部分をあらかじめカットしておきました。

側面(短)に貼る貼り紙の両端の処理

蓋を作る

続いて蓋を作ります。

身に続いて蓋作り

基本的には、これまでの「身」と同じ工程を繰り返していきます。

ただし、角の折り返し部分については、まだ最適な方法が分かっていません。そこで今回は、「身」とは少し違う方法を試してみることにしました。

実際に作りながら、どちらの方法がよりきれいに仕上がるのか比較してみます。

角・折り返し部分の処理(改良版)

前述の方法で一度作ってみたところ、角の折り返し部分に紙がだぶつき、もう少しすっきり仕上げられそうだと感じました。

そこで今回は、角の処理方法を少し変えてみます。

まず、チップボールの角ギリギリまで切り込みを入れます。

角・折り返し部分をスッキリ処理するための切り込み

次に、側面(長)の折り返し部分を倒して折り目をつけ、写真の点線部分を長方形にカットします。

カットする幅は、チップボールの厚みと同じ3mm。

不要部分をカット

この形にしておくと、紙が余分に重なることなく、無駄なくきれいに折り返すことができます。

側面(長)の折り返しを貼り付けたら、次は側面(短)側の折り返しです。

こちらも折り返し部分を倒して折り目をつけ、写真のように不要な部分をカットしてから貼ります。

側面(短)の折り返し処理
スッキリと美しい折り返し処理

前述した方法よりも少し手間はかかりますが、こちらの方が折り返しやすく、角もすっきり仕上がりました。

また、角で紙がだぶついて厚くならないため、蓋をかぶせるときにも干渉しにくく、開閉もよりスムーズになると思います。

今回は実際に作りながら方法を改良してみました。貼り箱は、こうした細かな部分を試しながら、自分にとって作りやすく、きれいに仕上がる方法を見つけていくのも面白いところです。

完成

自作した貼り箱(縦20cm × 横35cm × 高さ19.5cm)

すべての貼り紙を貼り終え、箱が完成しました。

3mm厚のチップボールを芯材にしているので、しっかりとした重厚感があります。タント紙を貼ることで、無機質だったチップボールが落ち着いた雰囲気の化粧箱に仕上がりました。

実際に作品を収めてみると、作品のサイズに合わせて一から作っただけあって、収まりもぴったりです。

今回は一個だけの製作だったため、外注ではなく自作することにしましたが、実際に作ってみると、寸法の考え方や紙の貼り方、角の処理など、やってみなければ分からないことがたくさんありました。

特に角の処理は途中で方法を変更しましたが、最終的には改良した方法の方が、見た目もきれいで作業もしやすい仕上がりになりました。

一点物の作品に合わせて、箱も一から作る。

作品を収めるところまで含めて、今回の製作はひとつの作品づくりだったように思います。

実際に人形を収めてみる

自作の貼り箱に創作人形を収める

いよいよ、完成した箱に人形を収めてみます。

作品を入れてみると、箱の中には上下左右に適度な余裕があり、緩衝材を含めてちょうどよいサイズに仕上がりました。

今回の箱は作品のサイズを測るところから始め、内寸を決め、3mm厚のチップボールを切り出して組み立てました。

実際に人形を収めてみて、「この作品のための箱」が完成したという感じがします。

箱を閉じた状態では作品は見えませんが、蓋を開けたときに作品がきちんと収まっているところまでを含めて、今回の箱作りは完成です。

作ってみて分かったこと・失敗点

タ以前、タント紙の代わりにNTラシャを使って貼り箱を作ったことがあります。

NTラシャは反りにくく、高級感のある仕上がりになる一方で、ボンドがほんの少し付いただけでも汚れが目立ちやすく、はみ出した部分も目につきやすいという難しさがありました。

今回あらためてタント紙を使ってみて、個人的にはタント紙の方が扱いやすいと感じました。

また、今回の材料と方法なら、最大で40cm × 40cm × 40cm程度の箱までは自作できるのではないかと考えています。

これ以上のサイズになると、今回使用した木工用ボンドでは、塗り広げている間に乾いてしまう可能性があります。

その場合は、乾燥がもう少し遅い接着剤や、広い面に素早く塗り広げられるスポンジローラーなどが必要になりそうです。

あくまで今回の製作を通して感じた範囲での予想ですが、箱が大きくなるほど、接着剤をいかに素早く均一に塗れるかが重要になってくると思います。

次回作るなら変更したいところ

今回の製作で、次回は改善したいと思った点がいくつかあります。

  • 貼り紙の寸法は、計算だけで決めず、芯材を組み立ててから実寸で測る
  • 角の折り返しは、今回試した改良版の方法を採用する
  • NTラシャを使う場合は、ボンドのはみ出しにこれまで以上に注意する
  • 箱がさらに大きくなる場合は、接着剤と塗布方法を見直す

今回が初めての大型貼り箱だったので、実際に作ってみて初めて分かったことも多くありました。

次に同じくらいの大きさの箱を作る機会があれば、今回の経験を踏まえて、もう少し効率よく、そしてきれいに仕上げられそうです。

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