世界の片隅に、ひっそりと暮らす。|和紙人形『Cherry Blossom Girl』が生まれるまで

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アイキャッチ画像 観葉植物の葉の間に吊るして飾った小さな和紙人形Cherry Blossom Girl

「自分だけ、違う世界にいるのかもしれない」

ある時期、自分自身について知ったことをきっかけに、ふと、そんなことを考えました。

これまで私は、同じ世界を生きていると思っていた。

同じ時間の中で、
同じ社会の中で、
同じ出来事を経験して。

だから、きっと誰もが似たような世界を見ているのだと思っていました。

でも、実際にはそうではなかったのかもしれない。

同じ場所にいても、
同じ出来事を経験しても、
その人が見ている世界と、自分が見ている世界は、まったく違う。

そんなことに気づいたとき、
世界との間に、目には見えない境界線があるように感じました。

それは、誰かに拒絶されたわけでも、
ひとりぼっちになったわけでもありません。

それでも確かに、
「自分はこの世界の中に、うまく居場所を見つけられていないのかもしれない」

そんな感覚がありました。

けれど、こういう感情は、
きっと私だけのものではないと思っています。

学校で。
会社で。
地域のコミュニティで。
人と人との関わりの中で。

誰にも気づかれないまま、
「なんとなく自分だけ違う」と感じる瞬間は、
きっと誰にでもある。

大きな声で語るほどではない。
誰かに助けを求めるほどでもない。

それでも確かに存在している、
そんな小さな疎外感や違和感を、
なかったことにしたくありませんでした。

だから私は、
その感情をひとつの小さな存在にしてみようと思いました。


金色の紐で吊るした小さな和紙人形Cherry Blossom Girlの全身

この子は、世界のどこにも足をつけていない

今回の『Cherry Blossom Girl』は、
そんな思いから生まれた和紙人形です。

この子には、
はっきりとした「居場所」がありません。

だから、立たせることもしませんでした。

足元をしっかりと地面につけるのではなく、
どこかに吊るされている。

たちつくすような身体。

そして、
自分自身を守るように胸の前で組んだ両手。

「居場所がない」という感覚を、
造形そのものに置き換えていきました。

地に足がついていない。

それは、この子の存在そのものなのかもしれません。


赤いさくらんぼの頭部と小さな身体を持つ和紙人形、顔・上半身アップ。Cherry Blossom Girl

可愛らしい姿の、その奥にあるもの

一見すると、
赤く艶やかなさくらんぼ。

けれど、その下には小さな身体があります。

大きすぎる頭。
不釣り合いなほど小さな手足。

可愛らしい姿をしているけれど、
よく見ると、どこか人間ではない。

もしかすると、
この子の本来の姿は、
もっと禍々しいものなのかもしれません。

それでもこの子は、
人間になることに憧れている。

普通の存在になりたい。

誰かに怖がられず、
誰かに受け入れられ、
この世界の中で当たり前のように暮らしたい。

そんな願いを抱えながら、
決して完全には人間になれない。

今はまだ、
人間になろうとしている途中なのかもしれません。

この先、
いつか完全な人の姿になるのか。

それとも、
永遠にこの姿のまま、
人間への憧れを抱き続けるのか。

私にもわかりません。


金色の紐で吊るして飾る和紙人形Cherry Blossom Girlのオーナメント

それでも、この子は下を向かない

この子は、
世界を直視できるほどの勇気を持っているわけではありません。

けれど、
下を向いているわけでもありません。

怖いけれど、
誰かに気づいてほしい。

自分から近づいていくことはできなくても、
誰かが見つけてくれることを、
どこかで待っている。

そんな気持ちを、
視線の向きに込めました。

「私はここにいる」

声には出せないけれど、
そんな小さな存在の意思が、
この子の中にはあります。


「異質な存在でも、愛されたい」

この作品には、
自分自身の感覚も重なっています。

どれだけ価値観が社会と噛み合わなくても。

どれだけ「わかってもらえない」と感じても。

それでも、
誰かに認めてもらいたい。

自分のことを、
少しでも理解してほしい。

そして、たとえ誰にも理解されなかったとしても、
せめて自分だけは、
自分自身を嫌いにならずにいたい。

「異質な存在でも、愛されたい」

その気持ちは、
きっと誰にとっても、
それほど特別なものではないのだと思います。

この小さな人形は、
そんな気持ちを私なりの形にしたものです。


観葉植物の葉の間に少し隠れるように吊るした和紙人形Cherry Blossom Girl

なぜ、この子は吊るされているのか

この作品は、
クリスマスのために作ったオーナメントではありません。

季節を限定せず、
一年を通して日常の中にいてほしいと思い、
吊るして飾る形にしました。

そして、
できるだけ多くの場所に紛れ込めるように、
重量は約7gまで軽くしています。

観葉植物の細い枝にも。

カーテンや布にも。

本棚にも。

この子の「居場所のなさ」を、
飾り方でも表現したかったのです。

どこかに固定された台座ではなく、
その時々で、居場所を変えられる。

そんな存在にしました。


私が一番おすすめしたいのは、観葉植物の中

この子を飾るなら、
私は大きめの観葉植物の枝に吊るすのが一番好きです。

葉の間に、
少しだけ隠れるくらい。

遠くから見ると、
たくさんの葉の中に、
赤いさくらんぼがひとつだけ見える。

そのくらいがちょうどいいと思っています。

観葉植物の葉は、
大きさや形が違っていても、
どれも「葉」であることに変わりはありません。

そこへ突然、
ひとつだけ赤いものが現れる。

多数の緑の葉の中に、たったひとつの赤。

その景色の中に、
この子が紛れ込んでいる。

まるで、
大勢の人がいる世界の中に、
たったひとりだけ異質な存在がいるように。

でも、
その赤い存在は、
完全に隠れてしまうわけではない。

少しだけ見えている。

「ここにいるよ」

と、静かに知らせているような。

そんな飾り方が、
この作品には一番似合う気がしています。


透明感のあるクリアーレッドで着色する直前のさくらんぼ型の和紙人形の頭部

赤い果実は、この子のアイデンティティ

製作中、
この子が初めて「この子になった」と感じた瞬間があります。

それは、
さくらんぼの頭部を赤く着色したときでした。

それまで、
紙粘土と和紙でできた小さな人形だったものが、
赤い色をまとった瞬間、
突然ひとつの存在として立ち上がったように感じました。

この子にとって、
赤いさくらんぼの部分は、
ただの頭部ではありません。

この子がこの子であるための、
アイデンティティそのものです。

だからこそ、
クリアーレッドを重ね、
みずみずしい艶を持たせました。

人間になりたいと願いながら、
決して人間にはなりきれない。

その異質さを、
最後まで失わないために。


「飾る」のではなく、「紛れ込ませる」

私は、この作品を
「飾ってください」とはあまり言いたくありません。

むしろ、
どこかに紛れ込ませてほしい。

観葉植物の葉の間に。

本棚の片隅に。

窓辺に。

あなたの日常の中に、
何事もなかったかのように。

そして、ふとした瞬間に、

「あれ?
こんなところにいたんだ」

と気づいてほしい。

この子は、
誰にも気づかれないように暮らしているけれど、
本当は誰かに見つけてもらいたい。

だから、
あなたが見つけてくれたなら。

きっとこの子にとって、
そこが初めての「居場所」になるのだと思います。


小さな存在を、見過ごさないために

世界の中には、
目立たない感情がたくさんあります。

寂しいとは言えないけれど、
なんとなく馴染めない。

助けてほしいわけではないけれど、
誰かに気づいてほしい。

理解してもらえなくても、
自分の存在を否定したくはない。

そんな、
名前をつけるほどではない感情。

私は、そういうものを
なかったことにしたくありません。

大きな声では語られないものを、
小さな人形にして掬い上げる。

それが、
私が和紙人形を製作する理由のひとつなのかもしれません。

この子が、
あなたの日常の片隅に紛れ込んだとき。

その姿を見て、
ほんの少しだけ、
自分の中にある「言葉にならない何か」を
思い出してもらえたら。

そんなふうに思っています。


赤いさくらんぼの頭部と小さな身体を持つ和紙人形Cherry Blossom Girl
大きさ/約12.5センチ 素材/和紙・塗料・レジン・紙粘土・ワイヤー

『Cherry Blossom Girl』について

今回製作した和紙人形『Cherry Blossom Girl』は、
minne・Creemaにて販売しています。

約7gの軽量なオーナメントとして、
観葉植物の枝や本棚、窓辺など、
さまざまな場所に吊るしてお楽しみいただけます。

あなたの暮らしの中の、
まだ誰も気づいていない場所へ。

この小さな存在を、
そっと紛れ込ませてみてください。

▼作品の詳細・ご購入はこちら

【minne】
https://minne.com/items/45986820

【Creema】
https://www.creema.jp/item/21063982/detail

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